今日はおとな作文教室の生徒さんの作文のご紹介です。70代女性の作文。課題は「私の宝物」でした。
向田邦子『父の詫び状』の「字のない手紙」が素敵だったわと前置きされてから書き始められました。「字のない手紙」はこんなエッセイ(アメブロから拝借)です。
では美津江さんどうぞ。
「はあい」
父の手紙 安田美津江
40年近く前のことになるが、 亡くなった父から手紙が届くようになった。
父は私が20歳の時、 田んぼで脱穀機を止めようとしてモーターをつなぐベルトの金具に 長靴が引っ掛かり、右足切断の大けがをしていた。以来、 度重なる手術を経て、 義足でバイクを乗り回すまでに回復していたが、それから数年後、 家の裏のブロック塀を1人で積んだ翌日、脳梗塞を起こし、 右手と左足が動かなくなり、以来、 寝たきりの生活を余儀なくされていた。
その父が左手で書いた手紙は何が書いてあるのか判別できなかった が、長い間、私はそれを保管し、父が亡くなったとき、 棺に入れて葬った。
子育てと仕事に追われ、父親の気持ちを思いやれなかったことが、 今更のように悔やまれる。 お父さんの苦しみに比べれば何でもできると自分自身を鼓舞してき た私だが、父のそのころの年齢に今私も近づきつつある。
(浅岡からひとこと)お父様からの読めない手紙。 それは何とか頑張れば読めるという程度のものではなく、 本当に全く読めない、模様のような字だったそうです。それでも、 次々届く手紙をすべて、保管して取っておかれたとか。もう手元にはないけれど、宝物というとお父様からの手紙を連想されるのですね。美津江さん、ありがとうございました。
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